ODAが鍵を握る世界遺産登録の舞台裏

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 1972年に「人類共通の遺産の保護・保全」という理念のもとで出発した世界遺産。しかし現在、多すぎる登録数や政治介入などにより、さまざまな問題も発生している。木曽功著「世界遺産ビジネス」(小学館 740円+税)では、過渡期にある世界遺産の実像について、元ユネスコ大使が明らかにしていく。

 世界遺産に対する注目度が高まったのは、諸外国においても90年代に入ってからだ。世界規模のツーリズムが発展し、海外旅行者数は全世界で年間5億人を突破。多くの国が観光産業を基幹産業と捉え、集客力のあるコンテンツとして世界遺産登録に躍起になった。

 日本でも、1995年登録の「白川郷・五箇山の合掌造り集落」で、登録前の観光客が年間70万人弱だったのに対し、登録以降は年間平均150万人を維持。2014年登録の「富岡製糸場と絹産業遺産群」の来場者数は、前年度の31万人から134万人に急増している。

 しかし、世界遺産誘致の過熱化は、政治的な動きも激しくした。そのひとつが、ロビイングである。基本的にロビイングが行われるのは、世界遺産の審査機関で「登録延期」や「不登録」といったよくない評価が下った場合。各審査委員国大使にアポを取り、登録へのアップグレードをお願いして回るのだ。

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