ペリリュー島を舞台に小林よしのりが描く戦争漫画

公開日: 更新日:

 戦後70年の今年。終戦記念日の前後には、戦争を題材とした映画ドラマを見て、反戦への思いを強くした人も多いことだろう。ただし、これらの作品では主人公は皆、立派な青年で、愛する妻や子を思い、命をかけて戦うといった悲しくも美しい描かれ方がほとんどだ。

 しかし、人と人が殺し合うという狂気の戦場で、兵士たちはどのような心理状態にあったのか。決してきれい事では済まされない葛藤があったはずだ。小林よしのり著「卑怯者の島」(小学館 1800円+税)は、500ページにわたって壮絶な戦闘シーンと極限の世界観を描き出した渾身の戦争漫画。子供向け漫画ではなく、ゴーマニズム宣言とも一線を画す、新しい小林よしのり作品となっている。

 物語の舞台は、パラオのペリリュー島。フィクションではあるが、この島で繰り広げられた狂気の戦闘の様子は、実際に生き残った日米双方の元兵士たちが証言していることだ。文字通りの肉弾戦が描かれる本作では、兵士たちの手足が吹き飛び、内臓や目玉が飛び散り、あらゆるものが血に染まる様子がこれでもかと活写されている。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…