これは命懸けの異議申し立てだ
「琉球独立宣言」松島泰勝著
沖縄の現状を分析した秀逸な作品だ。米海兵隊普天間飛行場の移設に伴う辺野古新基地建設をめぐって、沖縄県の翁長雄志知事は、辺野古沿岸埋め立てに関する仲井真弘多前知事の承認に瑕疵があったので、取り消そうとしている。安倍政権は、沖縄の民意を無視して埋め立てを強行するつもりだ。このままでは流血の事態に発展する可能性も排除されない。
龍谷大学の松島泰勝教授は、本書で沖縄(琉球)の論理をわかりやすくこう説明している。
〈琉球人がみずからを独自な歴史的主体として自覚する手段が、琉球人アイデンティティです。「復帰」後の歴史のなかで、2014年の沖縄県知事選挙ほど「アイデンティティ」が強調されたことはありません。これは琉球の長い差別と支配の歴史を踏まえて、琉球の現在と将来を考える琉球人が集団として台頭してきていることを意味します。/これまで日本人としてみずからを考えていた琉球人が、自分とは何者なのか、日本人なのか、琉球人なのかを真剣に問うようになりました。学校やマスコミを通じて琉球人は日本人であると教えられ、「復帰」運動でも、日本が琉球の母国と信じてきました。しかし同胞であるはずの日本人が、琉球人の集団としての苦しみを自分の問題として考えていないことを、もはや否定できなくなったのです。〉