「霧」桜木紫乃氏

公開日: 更新日:

 直木賞受賞後、初の長編小説となる最新作は、3姉妹の愛憎を軸に据えた桜木版「宋家の三姉妹」ともいうべき、エンターテインメント小説。北海道最東端、ロシアとの“国境の町”根室を舞台に、自分の力で居場所を見つけていく女たちの物語だ。

「これまで北海道を舞台にした作品を書いてきましたが、国境のある町を舞台にしたのは初めてです。物語に出てくる野付半島で見た霧はすごく重くて、その景色はまるで“この世にあるあの世”のようでした。そんな濃い霧で先が見えない中で極道の姐になっていく珠生の姿と取り巻く人々との関係を描きました」

 時は昭和30年代。戦前から水産業を営む河之辺社長には3人の娘がいた。その次女・珠生は生家の世間体大事を嫌い、15歳で芸者になったはねっかえり。そんな珠生が惚れたのが、「育ての親」に代わり刑務所に入る相羽重之だった。

 出所後、珠生は海峡の裏仕事を牛耳るようになった相羽と所帯を持ち、図らずも姐となる。長女・智鶴は親の命に従って政界入りを目指す運輸会社の御曹司に嫁ぎ、三女・早苗は金貸しの次男を婿に取って実家を継ぐことが決まる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  2. 2

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  3. 3

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  4. 4

    ヤクルト茂木栄五郎 楽天時代、石井監督に「何で俺を使わないんだ!」と腹が立ったことは?

  5. 5

    バンテリンドームの"ホームランテラス"設置決定! 中日野手以上にスカウト陣が大喜びするワケ

  1. 6

    菜々緒&中村アン“稼ぎ頭”2人の明暗…移籍後に出演の「無能の鷹」「おむすび」で賛否

  2. 7

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  3. 8

    ソフトバンク城島健司CBO「CBOってどんな仕事?」「コーディネーターってどんな役割?」

  4. 9

    テレビでは流れないが…埼玉県八潮市陥没事故 74歳ドライバーの日常と素顔と家庭

  5. 10

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ