「『身体』を忘れた日本人」養老孟司 C・W・ニコル著
ニコルが若いとき、カモを撃とうとしたら、その殺気を感じたのか、水に潜った。殺気のオーラの中には、においもあるのかもしれない。北極に行ったときはそういうにおいを発していなかったため、動物がニコルを怖がらなかった。それを聞いて養老は、ある調香師の体験を紹介した。実家に帰省したとき、座敷に寝かせた子どもの近くを大きなムカデが這っていた。そのとき、におってきたのが自分の体臭だった。つまり、においを出してムカデを追い払おうとしたのだという。
解剖学者とナチュラリストが、現代人の「身体感覚の衰え」について語る対談集。
(山と溪谷社 1300円+税)