思わず見とれる“自然のデザイン”
「きらめく甲虫」丸山宗利著
元来、昆虫に限らず図鑑の図版は手描きの「絵のチカラ」に頼るものが多かった。リアリティーや美しさに加え、分類上の「違い」を際立たせることが重視された。なぜなら、観察対象の各パーツを「見分け、名付け、関連付ける」作業こそが解剖学/博物学的の本質だから。原始的に見えても「手で描く」ほうが「細部を意図的に区別できる」ため、写真よりも好都合なのだ。
一方、本書はピントや照明の問題など、撮影や画像処理の技術が向上し、写真の説明力が「図鑑の絵」のレベルに到達した成果といえる。しかも正確には通常の「写真」ではなく、念入りに切り出され、調整された「合成画像(CG)」と呼ぶべきものだ。というわけで、200点にのぼる昆虫の図版が絵でも写真でもなく、CGで構成されていること自体、陰の労力やコストも含め、じつはもっと評価されるべき出来事なのだ。
さて、甲虫とはカブトムシ、テントウムシなどの仲間。地上で最も繁栄している生き物で、その種類は約37万。鳥類9000種、哺乳類4000種など、ほかと比べても圧倒的なバリエーションを誇る。