思わず見とれる“自然のデザイン”
多種多様な色や形、キラリと輝く金属光沢の質感など、「見た目」で選ばれた本書の甲虫たち。素人には聞きなれない「構造色」という用語をはじめ、その「美」の秘密がクリアで色鮮やかな画像とともに明かされる。学名と日本語の愛称付き。所々に顔を出す、手描きのコメントのおかげで、たんなる「標本」が魅力的な「被創造物」へと変身する。そして甲虫の造形を「立体模型」に見立て、そのデザインを解説していく。
伝統的な図鑑の流儀ではタブーとされる「擬人化」「想像力の介入」もいとわない。コガネムシ、オサムシ、タマムシ、ゾウムシ、カミキリムシの5章立て。本文は10ページずつ。ページあたり3~5匹を掲載、大小のリズム感が楽しい。特に実物の数倍に引き伸ばされた写真は、機械や最先端の人工素材を思わせる。また、合間のコラムはうんちくの宝庫。「きらめく擬態」や「タマムシ裏カタログ」は思わず引き込まれる内容だ。A5変型、ソフトカバー、かがり綴じ、80ページ。「自然のデザイン」に興味をお持ちの貴方に、ぜひお薦めしたい。(幻冬舎 1300円+税)