「師走の扶持」澤田瞳子著
京にある鷹ケ峰御薬園で薬師をしている真葛のところに、医師から紹介されたという寺侍の娘、蓮がやってきた。16歳というが、13、14歳にしか見えないきゃしゃな娘だ。蛍狩りで知り合った男を好きになり、妊娠したが、それを告げたら男が水子になるのを防ぐという丸薬をくれた。飲んでいいかと尋ねられた真葛は、その丸薬が堕胎に用いる檳榔子の匂いがするのに気づく。しかも、その男というのは、兄嫁が真葛にもってきた見合いの相手だった。真葛は真相を探るために、断るはずだった見合いの相手と会ってみることにする。(「撫子ひともと」)
薬草を通じて人々の心を癒やす女薬師を描く6編の時代小説。(徳間書店 1600円+税)