「フィフス・ウェイブ」リック・ヤンシー著 安野玲訳
エイリアンによって地球が侵略される物語はこれまでたくさん書かれてきた。しかしその姿をここまで隠し続ける小説も珍しい。彼らがいったいどういう姿をしているのか、いっさい描かないのである。
地球から400キロの軌道上に突如、宇宙船が現れるものの、向こうからは何の接触もなく、地球からの呼びかけにも応じず、あるいは友好のために来たのかもしれないと思いはじめた10日目に、攻撃は突然行われる。まず地球規模の停電、次に巨大な津波、そしてウイルスによる伝染病蔓延という凄絶な攻撃。これで全人類の97%が死滅。それでもエイリアンは姿を見せない。
エイリアンの意識が人間の中で眠っていて、攻撃と同時に覚醒して生き残りの人類を殺しまわるというストーリーの大きな流れがあるので、侵略の意図はずいぶん以前からあったということになるが、なぜそんなに長い期間攻撃を待ったのか。その意図は謎のまま伏せられる。実はこれ、3部作の第1部なのだ。だからそのうち、エイリアンの姿も、その意図も明らかになるのだろう。
物語はそういう時代に生きる少女と少年の冒険を描くかたちで進んでいく。4月23日公開の映画の原作だが、全米でベストセラーになったヤングアダルト小説なので読みやすいのもいい。誰が本物の人間なのか分からないという状況で戦う彼らの奮闘ぶりを、ぜひお読みいただきたい。(集英社 1200円+税)