子どもにも「アベノミクスの失敗」を説明できる基礎知識60
「中国株」の暴落から円高が加速し、日本銀行による「マイナス金利」の実施で株価が低下。「アベノミクス」の混乱は深刻化している――。
そんなニュースを耳にして、それぞれのキーワードの意味や、どういう仕組みで起こるのかを正確に把握している人は少ないのではないか。
池田信夫著「今さら聞けない経済教室」(東洋経済新報社 1400円+税)では、昨今の日本経済の出来事を理解するためのキーワードについて、子どもに聞かれても説明できるようQ&A形式で分かりやすく解説している。
例えば、「アベノミクスはなぜ失敗したの?」。“デフレ脱却”で景気を回復させるはずだったものの、成長率もインフレ率もほぼゼロになってしまったのがアベノミクスの現状だ。政府は苦しい言い訳を繰り返し、“アベノミクスはうまくいったが消費税の増税が悪かった”という意見もある。しかし、これは間違いであると本書。
2014年4月の消費税アップで、4~10月の実質消費指数が100を下回ったのは確かだ。しかし、11月には年初の水準にまで回復し、2014年全体としての個人消費は前年より増えている。問題は、2015年に入って個人消費が下がったこと。その最大の原因は実質賃金の低下で、これはアベノミクスの影響だ。
インフレや円安は労働者の実質賃金を下げて輸出企業の収益を増やす政策であるため、労働者は当然貧しくなる。賃下げによる消費不況に今さら気づいた安倍首相は、財界に対し“賃上げ要請”をしているが、インフレで実質賃金を目減りさせながら賃上げを要請することは、ブレーキとアクセルを同時に踏んでいるようなもの。アベノミクス失敗の原因は、そもそも“デフレ脱却”という出発点が間違っていたことにあるのだ。
他にも、「マイナス金利とは」「軽減税率とは」「TPPで日本はどうなるのか」など、60のキーワードを解説。何となく知っていた経済への理解が深まるはずだ。