「ささやかで大きな嘘」(上・下)リアーン・モリアーティ著、和爾桃子訳
保育園を舞台にしたママ友小説だが、一気読みの面白さだ。保護者懇親会の日に何かがあったことは最初から明らかにされている。どうやら誰かが亡くなったらしい。しかし、誰が亡くなったのか、子供なのか大人なのか。殺人なのか事故なのか。それはなかなか明かされない。その意味でこれはミステリーだ。
同時に、ある児童のいじめ疑惑をめぐって対立するママ友たちの生活と意見が、それはもうたっぷりと読ませるから目を離せない。
マデリーンは別れた夫と後妻の子が自分の娘と同じ保育園に通うことが面白くないし、シングルマザーのジェーンは生活費の捻出に頭を痛めているし、何一つ不自由のない生活を送っているとみんなから思われているセレストは、夫の暴力にひたすら耐えている。そういう3人の生活がひたすら読みやすく、軽快に、そしてシリアスに描かれていく。そういう普通小説の面白さもあふれているのだ。
この3人はいじめの疑惑をかけられた児童を守る側だが、彼女たちと激しく対立するグループもいて、そちらのリーダーはキャリアウーマンのレナータ。専業主婦、シングルマザー、キャリアウーマンと、保護者もそれぞれ立場が異なるから難しいのである。
オーストラリアが舞台の小説だが、全米でベストセラーになり、ニコール・キッドマン主演で全7回のテレビドラマが今夏放映されるという。
日本でテレビドラマ化されるなら、主演は天海祐希だ。(東京創元社 各1100円+税)