トランプの「暴言術」は周到に計算された品の悪さ
「THE TRUMP傷ついたアメリカ、最強の切り札」ドナルド・J・トランプ著、岩下慶一訳
暴言放言、言いたい放題のトランプ。その背景にはしたたかな計算が――?暴言しても支持率が下がらないどころか、かえってアップする化け物のようなトランプ。本書はその選挙キャンペーン本。それだけに“暴言術”の秘訣がわかる。
たとえば――「米国の外交問題を泥沼に引き込んだ外交官たちは、私に外交の経験がないことを批判する」「だが世界の状況を見てみるがいい。控えめに言っても目も当てられない状態としか言いようがない」「まず他を圧倒する強力な軍隊を持つことだ。強い経済を利用して、友好的な国には見返りを、そうでない国には罰を与える」「サウジアラビアは毎日5億から10億ドルを稼ぎ出している。だが我々が守ってやらなければサウジもその富も存在できない。そして我々は彼らから何一つ受け取ってない」「我々はドイツも日本も韓国も守っている。どれも強く富裕な国々だ。ここでも我々はタダ働きだ」
要は地上げ屋じみた理屈で国家外交をやるというわけだが、この周到に計算された品の悪さこそがアメリカ版マイルド・ヤンキー層に受ける秘訣に違いない。(ワニブックス 1600円+税)