「美女の日本史」別冊宝島編集部著
幕末から昭和にかけて、それぞれの時代を彩った美女たちの人生から日本の歴史を描き出すビジュアルブック。
まずは冒頭では、テレビドラマの主人公に取り上げられ、ブームを巻き起こした明治の女性実業家・広岡浅子を特集。三井家に生まれ、大豪商の加島屋に嫁ぎ、炭鉱や銀行、生命保険会社の経営、そして日本初の女子大学設立など、その八面六臂の活躍はドラマでご存じのとおり。晩年のいかにも実業家然としたふくよかな姿は、お世辞にも美人とは言えないが、若き日に着物姿で読書する姿は、利発さが写真からもにじみ出ている。
幼いときから書物が好きだったが、生家には「女子に学問は不要」とする風潮があり、13歳で読書を禁じられてしまった。後年、女子教育に情熱をささげる原動力になったという。
続いて登場する楢崎龍(お龍)は、あの坂本龍馬の妻。龍馬が「まことにおもしろき女」と称したお龍は皇族などの侍医も務めた京都の医者の娘だったが、父の死で生活が一変。人買いに連れ去られた妹を取り返すため、刃物を懐に乗り込み、大見えを切って取り戻したとの逸話が残るほど男勝りの気性だった。
また、維新三傑の一人と言われる桂小五郎の妻・松子は、幕末期には芸妓として活躍していた。桂に見初められ身請けされた後も芸妓を続け、密談の場となる宴席で桂のために情報収集に努めたという。
さらに歌舞伎役者・5代目中村歌右衛門に「生涯二度とお目にかかるまい」と言わしめた絶世の美女で、西園寺公望や伊藤博文などをとりこにした芸妓・江良加代や、医師シーボルトと長崎の遊女の間に生まれ、日本人初の女医となった楠本イネなどの幕末明治の女たちから、「東洋のマタ・ハリ」と呼ばれた男装のスパイ・川島芳子や昭和の妖婦・阿部定まで、時系列に77人の女性たちのドラマチックな人生をたどる。
外務大臣・陸奥宗光の妻として知られ、その美貌と聡明さで「鹿鳴館の華」と社交界で称された陸奥亮子や、「大正三美人」と称された才色兼備の歌人・柳原白蓮と九条武子、林流舞踏を創始した林きむ子などは、現代の芸能界でも立派に通用するほど魅力的である。
ページの合間には、明治時代に行われた美人コンテストの入賞者や、明治・大正期の無名の女性たちをモデルにしたヌードグラビアなどの古写真も紹介する。
時に男たちを支え、そして時には矢面に立って、時代を動かしてきた女性たちは、その美しさもさることながら、人生を生き抜いた者が持つ内面からの輝きを放っている。(宝島社 1300円+税)