「神かくし ゆめ姫事件帖」和田はつ子著
将軍家息女のゆめ姫は、身分を隠して側用人・池本方忠の屋敷の居候として暮らしている。方忠以外、誰もゆめが将軍家の娘とは知らない。毎夜、ゆめは不可解な夢に苦しめられる。生母お菊の方や花嫁姿の自分、そして全身血まみれの若い男、そしてとうとう骸骨までが夢に現れる。ゆめに予知夢の能力があることを知る方忠の次男で与力の信二郎は、骸骨が持っていた懐剣に刻まれた家紋が井桁に下がり藤だと聞き顔色が変わる。従妹の梅乃の嫁ぎ先の井口家の家紋だったからだ。2年前、梅乃は祝言から3カ月後に姿を消し、神かくしにあったといわれていた。
不思議な力を持つ姫が、市井や大奥で悪をさばく連作時代小説。(角川春樹事務所 600円+税)