「青藍の峠」犬飼六岐著
蘭学者・緒方洪庵の適塾に、長野村から弥吉という若者がやってきた。元塾生・吉井の紹介で入門するつもりだったのに、適塾が吉井に依頼したのは下男の後釜だという。
洪庵は留守だったので、しかたなく下男としてとどまることに。実は弥吉は、攘夷派の吉井から洪庵の暗殺を命じられていた。洪庵が開国を進める幕府に加担するのではないかと思いこんでいたのだ。旅から戻った洪庵に初めて会ったとき、弥吉はその人物を見極めようとするが、その視線は洪庵の瞳にすうっと吸い込まれた。ある日、弥吉は洪庵の往診のお供をすることになったが……。
時代の転換期に正義を模索する若者を描く時代小説。(集英社 2000円+税)