アメリカ大統領選を巡る「スクープ偽証疑惑」の真相

公開日: 更新日:

 現在公開中のアメリカ映画「ニュースの真相」は、2004年当時、ブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑をスクープしたニュース番組に偽証の疑いがかけられ、「21世紀最大のメディア不祥事」と呼ばれた事件の真相を描いている。

 この映画のもとになっているのが、メアリー・メイプス著、稲垣みどり訳「大統領の疑惑」(キノブックス 2200円+税)。著者は元CBSニュースのベテランプロデューサーで、当のスクープ偽証の矢面に立たされた本人である。

 大統領選を間近に控えた2004年9月8日、人気報道番組「60ミニッツⅡ」が、再選を狙うブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑を報じた。ジョージ・W・ブッシュはベトナム戦争当時、パイロットの基本義務である健康診断の受診を拒否したり、理由なしにポストを1年間離れるなど、無名の兵士であれば罰則の対象となる行動を繰り返し、まるで兵役逃れの様相を呈していたという。

「60ミニッツⅡ」では、ブッシュの当時の上官であり、亡くなったキリアン中佐の文書を公開。それは当時のブッシュの行動を証明し、事実とは異なる“よい報告書”を書くよう上層部から圧力をかけられたことなどを伝える内容だった。著者らはキリアンの上官への取材や複数の文書アナリストへの鑑定依頼で、情報を精査して報道していた。

 ところが、報道の翌日から事態は急変する。極右のウェブサイトが文書は偽物だと主張し、フォントや文字間隔が当時のタイプライターでは打てないものだという論説を掲載。それはネット内で瞬く間にリンクされ、保守派のブロガーを中心に「60ミニッツⅡ」に対する大批判が起こった。事態は単なるネットの騒ぎに収まらず、著者が取材した人物が突然情報を取り下げるなど、異常な事態となっていった。

 結果、著者は仕事を失い、ブッシュは再選を果たしている。果たして真実はどこにあったのか。2016年のアメリカ大統領選を前に、ぜひ読んでおきたい。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動