「天晴れアヒルバス」山本幸久著
主人公・高松秀子の勤めるアヒルバスでは、バスガイドもツアー企画を提出する。「浅草で恋の花を咲かせましょう 三十代限定! 巡り逢いツアー」とか、「男を磨き鍛える! オジサマ限定エステ&うまいものツアー」とか、「東京で森林浴! パワースポットもいっちゃお! 癒し&御利益で人生ステップアップツアー」など、すべて秀子の後輩たちが企画したツアーである。
中には「東京都内で富士山にお詣りしちゃう富士塚巡り」などのマニアックなものもあったりする。そういう企画まで考えるのだから、バスガイドも楽ではない。さらに最近では外国人の客も増えて、そうなると通訳ガイドも同行することになるが、これがとんでもない男で、秀子は振り回される。
そういうバスガイドの仕事の日々を描く本書は、アヒルバスシリーズの第2弾。前作の「ある日、アヒルバス」はテレビドラマになったが、山本幸久の小説には、他にもテレビドラマの原作にふさわしいものがたくさんある。もっとドラマ化してほしいものだ。
主人公は前作に引き続き今回も高松秀子だが、続いているわけではないので、前作を未読でも大丈夫。秀子もアヒルバスに勤めて12年、もうベテランの域で後輩たちの指導にあたらなければならないが、私生活の幸せはいつ訪れるのか、それが気になる方はぜひとも本書を読まれたい。とうとう秀子に春が来そうなのだ。おお、大丈夫か秀子。(実業之日本社 1500円+税)