著者のコラム一覧
石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。著書「大人養成講座」「大人力検定」などで、日本の大人シーンを牽引している。最新刊「大人の言葉の選び方」も好評!

ゆるくて何でもあり 「はにわスピリッツ」の魅力

公開日: 更新日:

「はにわ」まりこふん著 青月社 1600円+税

 ああ、はにわについて、自分はなんて無知だったのか――。知っているようで知らないはにわと、一気に仲良くなれる絶好の入門書です。

 はにわは、3世紀半ばから7世紀末ごろまでの古墳時代に作られました。弥生時代と、仏教が入ってきた飛鳥時代にはさまれた時期です。古墳とセットで発掘され、聖域の境目を示す役割や、おまじないの意味があったと考えられているとか。

 はにわを「かわいいなぁ」という目線で見つめて、その魅力に楽しくスポットを当ててくれているのは、現在の古墳ブームを牽引しているまりこふん。「古墳をゆるく楽しく愛でる」をモットーに設立された「古墳にコーフン協会」の会長を務めています。卑弥呼風のコスチュームで、古墳への愛を歌い上げる「古墳シンガー」としても大活躍。各地の古墳イベントに引っ張りだこで、CDも発売しています。

 本のメーンは、たくさんのはにわの紹介。はにわというと、とぼけた表情でノンキなポーズをとっているイメージですが、しかめっ面で巨大な一物を突き出しているはにわもあります。このはにわに対して、彼女は「裏ビデオはにわ」というタイトルをつけ、どうして丸出しにしているのかを勝手に推測。さらに、写真に吹き出しを付けて、「どうだっ!」と言わせています。

 人物だけでなく、動物や家、舟など、じつにバラエティー豊か。どんな人がどんな気持ちで作っていたのか、1500年前の人たちと、はにわを通じて会話しているような気になり、なんだか親しみが湧いてきます。

 けっして精密ではなく、ゆるく作られているのもはにわの特徴。世知辛い世の中を生きる私たちに必要なのは、きっとはにわです。秋の行楽シーズン、はにわがいる古墳や博物館に出かけましょう。ゆるくて何でもありのはにわスピリッツに触れることで、人生が少し変わる……かも。

【連載】イカした中年を養成する大人の必読本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…