最初から「向いてる仕事」を探す無駄
「人生を面白くする『好きになる力』」山田五郎著 海竜社 1300円+税
この本には2種類の活用法があります。ひとつは、自分の生き方を見直すきっかけを与えてもらう本として。もうひとつは、若い後輩や部下、あるいは自分の子どもに説教するときのネタを仕入れる本として。
山田五郎を初めて知ったのは、25年ほど前の「タモリ倶楽部」だったでしょうか。1992年に出た初の著書「百万人のお尻学」は、彼の得意分野である美術鑑賞の手法で、お尻を大真面目に愛でるというくだらなくも高尚な名著でした。
以来、博覧強記っぷりや多趣味っぷりをいかんなく発揮して、タレントやコラムニストとして大活躍。彼ほど人生を楽しんでいるように見える人はいません。そんな人生の達人が、「人生を面白くする」方法を伝授してくれる本を出しました。
本書で詳しく語られているのは、「好きになる力」の効能とノウハウ。編集者としての実体験を踏まえつつ、特に強調されているのが、仕事を好きになる大切さです。
出版社に入って配属されたのは、縁も興味もなかったファッション誌。しかも職場環境は、今でいう超ブラック。そこで彼が「好きになる力」をどう鍛えて、どう発揮してきたか。いかにその力に助けられ、今にどう役立っているか。見開きごとに1話、それぞれ見出しが「好きになる川柳」になっているのも、彼の美学や律義な性格を表しています。
〈好きになる そのこと自体が 仕事です〉
〈最初から「向いてる仕事」を 探す無駄〉
〈この年で ビビれることが 幸せだ〉
たとえば、こんな感じです。若者はもちろん、中堅やベテランにも心に染みて役に立つ言葉がいっぱい。努力して好きになってみることが大切なのは、仕事だけではありません。人間関係、趣味、食べ物、日々の出来事など、すべてにいえることです。「好きになる力」で、不満や不機嫌を吹き飛ばしましょう。