おもしろ本屋と出合う本特集
「わたしの小さな古本屋」田中美穂著
岡山県倉敷市で小さな古本屋を一人で切り盛りする女性店主が、その日常をつづったエッセー。
仕事を辞めたその日に、古本屋を開くことを決めた著者は、その足で不動産屋を巡り店舗を探し始める。見よう見まねで、21歳で一国一城のあるじになったものの、売り上げは伸びず、早朝や深夜のアルバイトが必要だった。しかし、父の死を転機に、本腰を入れて仕事に向き合うことで次第に軌道に乗り始めたという。やがて人とのつながりから、さまざまなイベントを店で行うようになり、気が付けば20年を超える歳月が過ぎていた。大金も動かず、派手さもない古本屋の仕事だが、つづられる一期一会の客との出会いなどから、働くことの喜びや生きることの本質について改めて考えさせてくれる。(筑摩書房 780円+税)