「世界のへんな肉」白石あづさ氏
世界100カ国以上を約3年かけて巡り、各国で出合った動物とその味についてつづった異色の旅エッセーである。
「旅の楽しみといえば何といっても食事。国が替われば食材も調理方法も変わり、市場で珍しい果物などを見て驚くこともしばしばでした。けれど一番衝撃だったのは、その国で食べられている肉。日本では絶対に食材と見なさない動物が、フツーに食べ物として認識されているんですよ。それでかわいそうと思いつつも、もしかしておいしいのかも? と好奇心にかきたてられたんです」
エジプトでは恐る恐る口にしたラクダのケバブ(串焼き)の鹿肉のような味わいに驚き、ケニアではインパラが牛肉にそっくりのうまさで悶絶する。そして、サバンナではダチョウに追いかけられマサイ族に助けられたり、真夜中のアマゾンでワニを生け捕りに出かけるなどレアな体験の中で著者は動物と触れ合い、また食を通して現地の人々と交流を深めていく。
「思い出深いのはイランですね。旅人である私を泊めてくれた親切なイラン・ファミリーと町のサンドイッチ屋を訪れたとき、“サンドビーチェマーグス”を勧められたんです。聞けば羊の脳みそだという。うろたえていると店の人がサービスで大盛りにしてくれ、おまけに人だかりが出来てしまった。大注目の中、引き下がれなかったですね(笑い)」