「不正に走る普通の人たち」前田康二郎氏
不正会計や粉飾決算など、会社や組織のさまざまな不正がどのような背景で行われていくのかを豊富な事例と共にひもといていく本書。もしも今あなたが、“自分は不正などしないし巻き込まれもしないから関係ない話だ”と思ったとしたら、それこそが最も危ない状況であると、フリーランスの経理として活躍する著者は警鐘を鳴らす。
「不正に関わる社員は、何も特別な人ではありません。身近で不正が起きた人にどんな社員がやったのかを聞いてみると、“いい人だった”“そんなことをする人には見えなかった”という答えがほとんどです。いかにも悪いことをしそうな社員は、自然と周囲が監視しているし、万が一が起きてもすぐに発覚する。逆に無防備な普通の人ほど不正の泥沼にはまりやすいので、注意が必要です」
不正には自ら進んでやる不正と、誰かにやらされる不正の2つのパターンがある。前者は発覚しても自業自得だが、やっかいなのが後者だ。自分の手を汚したくないために、誰かに強要する不正というものもある。強要されている人を第三者から見れば、「きっぱりと断ればいい」「告発すればいい」と感じるだろう。しかし、現実はドラマの「半沢直樹」のようにはいかない。