「若者はなぜモノを買わないのか」堀好伸氏
また、若者の消費の現場は大人の想像のはるか先を行っている。例えば、結婚式に呼ばれたので新しいスーツを買おうとしたとする。かつてなら、百貨店やスーツ専門店に足を運び、店員に相談しながら買っただろう。少し時代が進めば、パソコンでファッション系の通販サイトを検索し、どんなスーツがあるのか、と進んでいったはずだ。しかし――。
「今の若者はリアルはもちろん、ネットでも“お店”には向かいません。まずスマホを使い、検索サイトでダイレクトに“画像検索”をしてスーツを探すのです。膨大に表示される画像の中には、実際に結婚式に参加している写真なども出てくるため、スーツを着ているシーンの雰囲気も含めて様子が分かる。自分の感覚に合うものが見つかれば、そこで初めて、ショップなどの情報に飛ぶわけです」
現代の若者の消費性向には、「シミュレーション消費」というキーワードがあると著者。
スマホによる情報収集の結果、実際に体験したような感覚を得てしまい、購入のハードルが上がってしまう現象と解説している。
「大人は“実際に体験もしないで……”と眉をひそめるかもしれませんが、SNSを含む現代の情報はスピード感があり、リアルで膨大です。それらを使いこなす若者にとっては、すべてのモノ・コトが想定の範囲内なのです」