「落語と歩く」田中敦著
落語の舞台を歩く楽しさを伝える散歩エッセー。
手始めに落語「王子の狐」の舞台・東京の北区王子へ。落語のあらすじを紹介後、まずは王子神社へ。しかし、ここは落語に出てくる「王子のお稲荷さん」ではなく、かつて王子権現と呼ばれた神社だという。この地を支配していた豊島氏が紀州熊野三山から王子大神を祭り、若一王子と名付けたのが始まり。紀州出身の8代将軍吉宗の時に周辺の整備が進み、地名も王子になった。その王子神社から400メートルほどで王子稲荷に到着。その裏山に狐の巣跡とされる岩穴がある。そして落語に登場する実在の料理屋(現在は屋台営業)で名物の卵焼きをお土産に。
他にも上方落語の「桜の宮」などの舞台を歩きながら、落語や土地の歴史のウンチクを語り、落語散歩へと読者をいざなう。(岩波書店 840円+税)