怒りを鎮めてもらうために火山に神様に官位授与?
「日本列島 100万年史」山崎晴雄、久保純子著
日本のアルプスは美しいが、胸に月のマークをつけたアイツが潜んでいる。スポーツ万能なツキノワグマだ。一度、山で遭遇したが思ったより小柄で相撲取りなら突き落としで勝てそうだ。しかし、これが北海道の横綱、獰猛なヒグマならば張り手一発で負けるだろう。
ところで、なぜ津軽海峡を境にクマの分布が分かれているのか。太古の昔、大陸と地続きだった日本へ、どちらのクマもウキウキとやってきた。しかし、地殻変動や気候の変化などで生息域が分かれてしまったらしい。
実は、何万年の歴史の中で、今の地形はほんの一瞬のことなのだ。2人の地理学者が書いた本書を読むと、人類が誕生してからも、噴火や地震、海面の上昇などで日本列島の形が絶えず変わっていく様子が分かる。
氷河期で海面が今よりも120メートル低かったころ、瀬戸内海では草が茂り、ナウマンゾウがタッタカと走っていたそうだ。その隣の九州では、今でもポッポと噴煙を上げる桜島が気になるが、7300年前に薩摩硫黄島で起きた日本最後の超巨大噴火には比べようがない。数百度の火砕流は時速100キロで海を越え、何と南九州に住んでいた縄文人を一瞬で全滅させてしまったというから恐ろしい。
今よりも火山が活発だったのだろうか。平安時代には伊豆の神津島の火山が爆発し島民が全滅。隣の新島からの報告で朝廷は火山の神様に「従五位下」という官位を与え……ってなぜ? 勲章をあげれば喜んで怒りを鎮めてくれると思ったようだが、その50年後、新島も爆発し住民全滅。神津島が全滅していたため、すぐに報告する人もなく、新島の神様には官位が与えられなかった。
北朝鮮のミサイルは、話し合いで何とかなるかもしれない希望がある。しかし、巨大噴火や地震は待ったなし。現代の科学でも無理だろう。それでも我々のご先祖さまは災害から復活し、生き延びてきた。壮大な日本列島の歴史を読むと、人間同士、ちまちま争うのがもったいないと思えてくる深い本だ。