「わたしが子どもをもたない理由」下重暁子著
子どもを持つ持たないは、個人の選択だが、えてして子どものいる人は「子どもがいなくて寂しいでしょう」と思いがちだ。しかし、最初からいないものにそうした感情はない。ペットを飼ってない人が「寂しいでしょう」と言われてピンとこないのと同じことなのだ。
このように戦後70年経っても日本の「個」に対する意識が変わらないが、それは悪しき家族制度の残滓だという。家族は美しいものという幻想に縛られるがゆえに、自分の生き方と反していても子どもをつくる人も少なくないのが現状だ。
そしてこの数年、国は少子化を理由に子づくりを勧め、子どものいる家庭に補助金を出すなど無言の圧力を掛けつつある。しかし、私たちには自分で選び取った人生を送る権利がある。もちろん、それには覚悟が必要だが……。
60万部を超すベストセラーとなった「家族という病」の著者が、自分が子どもを持たなかった理由をつづりながら、産むことの圧力に一石を投じたエッセー。(かんき出版 1100円+税)