「腸内フローラ移植」の最前線
「うんちのクソヂカラ」清水真著
私たちのお腹には、腸内細菌が3万種類、1000兆個も存在し、その総重量はなんと1・5キロにもなる。腸内細菌は同じ仲間同士が寄り添って集落を形成しており、その姿を電子顕微鏡で観察すると花畑のように見えることから、「腸内フローラ(flora)」と呼ばれている。
この腸内フローラを他人からもらい、腸内に移すことで腸内環境を改善し、各種疾患の改善を目指すのが腸内フローラ移植だ。著者はその第一人者であり、35年にもわたり腸内フローラの研究に従事。2010年に腸内フローラバンクを設立し、80人以上のドナーの中から最適な腸内フローラを選び、瞬時に腸内に定着させるという技術を独自開発している。
現在、大学病院などで行われている腸内フローラ移植では、倫理的な配慮によりドナーとなるのは2親等以内の親族とすることが勧められ、大腸内視鏡を用いて移植されている。しかし著者のクリニックでは、第三者の健康な便を用いて菌液を作り、これを腸カテーテルで注入する移植方法を採用している。生活環境のまったく違うドナーの便を使用することで、フローラバランスに大きな変化が期待できるためだ。
その効果は、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群など腸の疾患だけでなく、アトピー性皮膚炎や自閉症、うつ病など、幅広く発揮されているという。肺腺がんや慢性膵炎、糖尿病性腎症などに対する治療例も紹介。“うんち”に秘められたパワーに注目したい。
(晩聲社 1300円+税)