冠動脈性心疾患による死亡者ゼロの地域があった!
先進国に生活習慣病が蔓延し始めたのは、肉や乳製品を大量に取る欧米型の食生活が普及し始めた第2次世界大戦後。インスタント食品やファストフードなどの高カロリー食品が大量消費されるようになった時期とも重なる。現代人がかかる多くの疾患は、食生活が最大の原因と言っても過言ではない。
マイケル・グレガー、ジーン・ストーン著、神崎朗子訳「食事のせいで、死なないために」(NHK出版 2300円+税)では、世界最大規模の疫学研究「チャイナ・スタディ」をはじめとする膨大なデータを踏まえ、現代人の死因トップ15について、これらを予防するための食事について解説している。
毎年40万人近くの米国人の命を奪う脅威。それは、疫病でもテロでもなく、冠動脈性心疾患だ。原因は動脈の壁にこびりつく脂肪性沈着物で、アテローム性動脈硬化性プラークと呼ばれている。コレステロールを多く含んだ汚れの塊が、血管内膜に蓄積することで生じる動脈硬化だ。
動脈硬化は老化に伴い誰にでも起きると思われがちだが、その答えは「ノー」であると本書。中国予防医学研究所とコーネル大学、オックスフォード大学による大規模共同研究「チャイナ・スタディ」において、中国の貴州省やアフリカのウガンダなどに、冠動脈性心疾患による死亡者が存在しない地域が発見されているためだ。これらの地域に共通しているのが、穀物や野菜など植物由来の食事が中心で、動物性脂肪の摂取が極めて少ないこと。中国料理とアフリカ料理は全く異なるが、双方とも総コレステロール値が平均150㎎/デシリットル以下と極めて低く、菜食主義の人々と同じレベルだったという。
一方、「米国医師会ジャーナル」で発表された研究では、事故死した米国人の若年者を解剖したところ、10歳ごろにはアテローム性動脈硬化の第1段階である「脂肪線条」が認められることが明らかになったという。プラークの原因はLDLコレステロールであり、加工食品や肉に含まれるトランス脂肪酸や、スナック菓子などに含まれる飽和脂肪酸の摂取によって上昇する。
先進国の医療は目覚ましく進化しているが、まずは食生活の改善を図り、病気を予防する取り組みこそが重要だと本書は訴えている。