「ぼくの伯父さん」伊丹十三著
著者はアメリカ人が怖い。日本人同士が話をするときは何とか相手と合意しようとする。つまりイエスというために生きているが、アメリカ人はいつでも「NO」という用意がある。「常に戦う用意がある」――、これがアメリカ人の基本的性格のひとつだ。
だが、これでは社会が成り立たないので、彼らは歯をむきだしてニカッと笑う。彼らは真剣に笑顔に取り組んで、社交的な良きアメリカ市民であることを証明する。西部の開拓者のごとき男が出会ったとき、笑うのは「俺は自分の協調性を証明したぞ。今度はお前が証明してみせる番だ」ということなのだ。(「アメリカ人」)
俳優・映画監督など多才な活躍をした伊丹十三の単行本未収録エッセー集。(つるとはな 2000円+税)