「地検のS」伊兼源太郎著
「置き土産」「暗闘法廷」「血」など5作からなる連作短編。主人公は通称「S」と呼ばれる伊勢雅行。40代半ばにして真っ白な髪の毛からして白い主↓シロヌシ↓Sと記者連中から呼ばれ、総務課長のS、スパイのSとも掛けてそう呼ばれているのだ。
舞台は政令指定都市・湊川市の地検。新聞記者の沢村は無罪判決を他社に抜かれ、左遷の危機に陥っていた。そのとき彼は伊勢がある小さな事件の法廷を扉の小窓からのぞき込んでいるのを見かける。
勘を働かせた沢村は旧知の元刑事を通じて、事件に迫る。法律は道具、それを使って、窮地の人間を助けてはいけないのか、という元刑事の言葉が重い。
(講談社 1600円+税)