「おまじない」西加奈子著
「炎上する君」以来、8年ぶりの短編集。キーワードは「おじさん」と「魔法の言葉=おまじない」だ。
全8編の登場人物はいずれも訳ありの「女の子」(年齢はまちまち)で、さまざまな人生の転機に思い悩んでいる。そんな彼女たちの背中を、おじさんが魔法のひとことで、そっと背中を押してくれる――。
初めてスカートをはいてかわいい女の子の仲間入りをするが、周囲から浮いてしまった少女と、中庭の焼却炉で何かを燃やしているおじさん(「燃やす」)。ファッションモデルの仕事に自信を失った女の子と、いちご中心に世界が回っているおじさん(「いちご」)。自分の不細工ぶりをネタにしているキャバ嬢と落ちぶれた芸人(「あねご」)。結婚したさにわざと妊娠したと思われるのではと悩む妊婦と、覚醒剤に手を出して地に落ちた元スターサッカー選手(「マタニティ」)……。
女の子とおじさんという、およそ相いれない両者の組み合わせが、作者の魔法によって思わぬ異化効果を生み出す。著者自らの手になるイラストレーションも見どころ。
(筑摩書房 1300円+税)