「炎と怒り トランプ政権の内幕」マイケル・ウォルフ著 関根光宏、藤田美菜子ほか訳
トランプ政権の内幕を暴いた本書が発売される直前、トランプ大統領は本の内容は間違いや偽の情報であふれているとして出版差し止めを要求。出版社は発売を前倒しするとともに、当初15万部を予定した発行部数を急遽100万部を重版したという、発売前から話題を呼んだベストセラー。
著者がトランプに初めて接触したのは大統領選さなかの16年5月。そこから1年半かけて、トランプはじめ彼を取り巻く幹部ら200人にインタビューを行い、それをまとめたのが本書。ここで描かれるトランプは、外交や医療保険制度などの政策についての知識も関心もなく、その場しのぎで発言を繰り返す、およそ政治家とはかけ離れた奇矯な人間である。
そのほか、娘のイバンカが明かしたトランプの髪形の秘密なども書かれているが、本書の最大のスキャンダルは、トランプ本人もその周囲の人間も、誰ひとりトランプが大統領になるとは全く思っていなかった事実を描き出したことだ。冗談が本気になったという戸惑いの上で成り立つ政権。この恐ろしさに身がすくむ。(早川書房 1800円+税)