名庭園に隠された“しかけ”を読み解く
「しかけに感動する『京都名庭園』」烏賀陽百合著
京都に数ある日本庭園の中から、おすすめの庭を解説してくれるビジュアルガイドブック。
隅々まで計算しつくされ造られた庭園は、ただ正対するだけで見る人の心のおりを洗い流すような美しさがある。さらに、庭園に暗号のようにちりばめられた「しかけ」を読み解き、理解していくと、今まで気がつかなかった景色が見えてくるという。
日本庭園は長い年月をかけて研ぎ澄まされ、培われた日本人の美意識と感性から生み出された究極の芸術品でもあるのだ。
日本庭園には、西芳寺や金閣寺など「極楽浄土」を表現したものが多い。平安時代、関白として政治の中枢にいた藤原頼通が、父・道長の別荘を寺院に改めた宇治の「平等院」もそのひとつ。
当時は、釈迦入滅2000年後に仏法が廃れるといわれた「末法思想」の真っただ中で、頼通は自分のためだけに極楽浄土の世界を作ったそうだ。
鳳凰堂の前は、かつて江戸時代に造られた枯れ山水風の庭だったが、阿字池の護岸調査を受けて、平安時代の美しい州浜に戻されている。
枯れ山水庭園では、白砂などを使って海に見立て、模様をつけて波や水紋を表す。この砂紋とともに、自然石を仏や山、鶴、亀、鯉などに見立てて表現する手法もある。
昭和の名作庭家・重森三玲が1961年に手掛けた大徳寺の塔頭「瑞峯院」の「閑眠庭」は、瑞峯院を創建したキリシタン大名・大友宗麟へのオマージュとして7つの石で十字架を表している。禅寺に十字架が潜んでいるのは、もちろんここだけだ。
他にも「ししおどし」を初めて庭園に使用した「詩仙堂」や、石への美意識にあふれた「桂離宮」、風景がふすま絵のように見える「勝林院・宝泉院」など21庭園を案内。
京都散策の格好のお供になってくれるおすすめ本。
(誠文堂新光社 1600円+税)