目からウロコ 雑草の花意外な美しさ
「美しき小さな雑草の花図鑑」大作晃一/写真 多田多恵子/文
ガーデナーにとっては、待ちに待ったシーズンの到来だが、同時に雑草との終わりのない戦いの季節の始まりでもある。いくら園芸植物をきれいに咲かせても、雑草だらけの庭では努力も台無しだ。増殖を防ぐために、雑草が花を咲かせる前にやっつけなければならない。
でも、この図鑑を手にしたら、雑草に対するそんな敵対意識がちょっと変わるかも。道端や公園、庭などで、いつも目にしてはいるが、じっくりと見たことがない雑草の小さな花の知られざる魅力を教えてくれる図鑑である。
原っぱなどでお馴染みの「シロツメクサ(白詰草)」。直径2センチほどの丸いポンポンのような白い花は、すぐに思い浮かべることができるだろう。でも、ルーペでしげしげとこの花を見たことがある人は少ないのでは。掲載されている拡大写真を見てみると、清楚でいながら華やか、一輪だけで花束のような豪華さを備えたその花に、思わず見とれるはずだ。
その他、道路際などに生えるその名も「ハキダメギク(掃溜菊)」の白と黄の花びらを組み合わせた勲章のような花、抜かれても枯れないのでその名がついた「マンネングサ(万年草)」の黄色い星形の花、高級な蘭と見まがうばかりの「ムラサキケマン(紫華鬘)」など。
その花の多くは、1センチにも満たない大きさで、実物大の写真を見ると、確かにその美しさに気づくことは難しい。でも、拡大写真を見れば、どの花もそれぞれが個性豊かで、その美しさは決して観賞用に改良された園芸植物の花に見劣りすることはない。
もしかしたら、花を愛し、花のために懸命に雑草を抜いている人が一番雑草の美しさに気づいていないのかもしれない。
(山と溪谷社 1600円+税)