創価学会と特高警察の蜜月関係を突きつける一冊

公開日: 更新日:

「創価学会秘史」高橋篤史著/講談社

 創価学会は「反戦・平和の団体」であり、その伝統をもっているという“神話”をひっくり返す強烈な本である。著者は創価学会がひた隠す戦前・戦中の機関紙誌「新教」と「価値創造」を発掘し、特高警察と蜜月関係にあった事実を突きつける。

 1933年に起きた「長野県小学校教員赤化事件」で多くの教師たちが逮捕され、投獄された。そのほとんどが転向して、心に深い傷を負った。彼らを、創価学会の前身である創価教育学会は特高の元締である内務省警保局と緊密に連絡を取りながら折伏する。

 初代会長の牧口常三郎は赤化青年のひとりにこう問いかけた。

「君はマルクス主義によって世の中が救えると考えているそうだね。わしは法華経の修行者です。法華経によって世を救おうと思っています。法華経が勝つか、マルクス主義が勝つか、大いに議論しよう。もしマルクス主義が勝ったらわしは君の弟子になろう。もし法華経が勝ったら君はわしの弟子になって、世のためにつくしましょう」

 そして議論を重ね、日蓮正宗に入信させた。

「価値創造」ではヒトラーの「我が闘争」を否定的ではなく、肯定的に紹介している。

 では、なぜ牧口は治安維持法違反・不敬罪で逮捕され、獄死しなければならなかったのか? それは国家神道ではなく日蓮正宗こそが唯一絶対に正しい教えであることを強調するため、「天皇も凡夫だ」と言ったり、「伊勢神宮など拝む必要はない」と訴えたためだった。

 だから、牧口は反戦平和の思想を持っていたわけではなく、「それ以前の言動を踏まえると、日本があげて日蓮正宗に帰依さえすれば戦局がたちまち好転すると、牧口は考えていたのではないか」と著者は指摘する。

 また、初期から創価教育学会には実業家が多く集まっていたというのも見逃せない。

「価値創造」の創刊号に「損よりは得を、害よりは利を、悪よりは善を、醜よりは美を」と牧口は書いて、いわば現世利益主義宣言をしている。それを受けて実業家グループのひとりで金融業に携わっていた者が「信仰は事業のバロメーターなり、信仰強盛ならば、即ち事業盛んなり」と発言している。

 いま、自民党と手を結んで政治を腐敗させている芽は発足のころからあったのである。まさに「自民党に天罰を! 公明党(創価学会)に仏罰を!」だ。 ★★★(選者・佐高信)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭