「凶犬の眼」柚月裕子著
主人公は、呉原東捜査2課から、田舎の駐在所に異動した日岡秀一。かつての上司・大上が暴力団の尾谷組に肩入れしていたことを憂慮した県警本部による左遷だったが、血で血を洗う抗争事件の現場から田んぼと畑を巡回する生活に激変したことに、物足りなさを感じていた。
そんなある日、広島の叔父の葬儀に出た日岡は、帰り道に立ち寄った小料理屋・志野で、指名手配中の国光寛郎と遭遇する。
国光を拘束できれば刑事として第一線に戻れるかもしれないと思った日岡に対して、自分の正体を気づかれたことを察した国光は、やり残したことを終えたらあんたに手錠をはめてもらうから時間をくれと直談判してきた。果たして日岡はどんな選択をするのか……。
本作は、第69回日本推理作家協会賞を受賞し、第154回直木賞候補、第37回吉川英治文学新人賞候補、第6回山田風太郎賞候補にもなって注目を浴び、5月には映画も公開される「孤狼の血」の続編。
静かな田舎町に潜むおとこ気あふれる指名手配犯との真剣勝負をスリリングに描く。自らの正義を貫く日岡の情熱に圧倒される。
(KADOKAWA 1600円+税)