「牛と土 福島、3・11その後。」眞並恭介著
2011年の原発事故から2カ月後、国は原発から半径20キロ圏内の警戒区域に残された家畜の殺処分を指示。しかし、許可証がなければ立ち入ることもできない区域の牧場でいまも生き続けている牛たちがいる。本書は、処分に同意できず、被ばくして出荷できない牛たちを命懸けで守ってきた牛飼いたちの戦いを追ったルポルタージュ。
原発の北西約10キロ、福島県浪江町小丸地区で繁殖用の牛と子牛など合わせて20頭を飼育していた渡部さんは、「いま生きている牛を無駄に死なせて、これから先、牛飼いを続けていくことはできない」と避難先から通って牛の世話を続ける。渡部さんをはじめ、被ばくした牛が生きていく意味を問い続けながら、必死に現実に立ち向かった牛飼いたちの克明な記録。(集英社 640円+税)