レフト3.0政策はは「経済にデモクラシーを」
「そろそろ左派は〈経済〉を語ろう」ブレイディみかこ、松尾匡、北田暁大著/亜紀書房1700円+税
日本の左派は、護憲などの政治運動やマイノリティーの人権擁護には熱心だが、勤労庶民のための経済政策を持ちあわせていない。このことに批判的な論者たちの鼎談を収めた本書では、「経済にデモクラシーを」を主張するアメリカやヨーロッパの新しい左派(レフト3・0)の運動や主張が紹介されている。
ちなみに〈レフト1.0〉は20世紀の共産主義や社会民主主義などの旧左翼。新左翼から反原発や環境保護の市民運動、フェミニズムなどのマイノリティー運動にいたる流れが〈レフト2.0〉。
冷戦後、欧米の中道右派や中道左派(日本でいえば小泉自民党や旧民主党)政権は、緊縮財政と規制緩和という新自由主義政策を推進してきた。その産物であるデフレ不況、雇用の不安定化、「小さな政府」と福祉予算の削減などでさんざんに痛めつけられ、我慢の限界に達した労働者階級の「反乱」として、アメリカのトランプ大統領誕生、イギリスのEU離脱がある。
1930年前後のドイツでも、緊縮政策で経済危機を致命的に悪化させた左右の中道政党から、再軍備と公共投資による積極財政を主張するナチ党が、大量失業と生活苦に喘ぐ民衆の支持を奪いとることに成功した。今日の欧米では、ファシズムにも通じる右派ポピュリズムと新しい左派が、困窮した勤労者の支持を争奪している。両勢力に挟まれた左右の中道勢力の没落は著しい。
コービンのイギリス労働党、スペインのポデモスなど〈レフト3.0〉は反緊縮を掲げ、金融緩和や公共投資の増額を求めている。しかし日本で反緊縮を実行しているのは〈ライト〉側の安倍政権で、財務省と一緒に増税と財政健全化を主張しているのが左派のほうなのだ。このねじれの解消こそ急務だと、著者たちは強調する。
アベノミクスの金融緩和と公共投資に関しては、その部分性や不徹底性を批判し、新自由主義的な規制緩和や福祉予算の削減は徹底的に拒否する〈レフト3.0〉の経済政策こそが必要だと。