「Team383」中澤日菜子著
「ママチャリ・グランプリ」は富士スピードウェイで実際に行われているレースである。そのレースをモデルにしたのが本書。ひとチーム5~10人の構成で、1台のママチャリを使って8時間乗り続けるというものだ。いわば、ママチャリの駅伝である。
そこに出場する素人集団「チーム383」の面々が本書の主人公。これは5人の年齢の合計数であり、つまり平均年齢が76.6歳であるということだ。大丈夫かレースに出て。
そういう年齢の面々であるから、レース以前にさまざまな問題がある。50年間も秘めていた老妻の思いに初めて気がつくメンバーもいれば、死んだ夫をずっと忘れられない妻もいる。そういうドラマが次々に描かれていく。最後の1編だけはやりすぎの感がなくもないが、これはご愛嬌。
この連作集を貫くテーマは、人生でいちばん大切なのは友だ、ということである。友さえいれば、後期高齢者でも、体にガタがきても、人生は結構楽しい。その真実がここにある。「チーム383」はママチャリレースに出場するために結成されたが、実は、残りの人生を楽しく生きるために結成されたのである。
メンバーの1人が運転免許を返納するシーンから本書は始まるが、その寂しさから充足感あふれるラストへの変化こそがキモ。友人の少ない者がこれを読むと、羨ましくなる。こんな老後もいいなという気になってくる。(新潮社 1600円+税)