「エヴァンズ家の娘」ヘザー・ヤング著 宇佐川晶子訳
恋人との生活に疲れたジャスティーンは、2人の娘を連れて湖畔の別荘にやってくる。
その別荘は大叔母ルーシーが残してくれたもので、彼女は64年前に妹の失踪、父親の自殺と相次いで悲劇が起きて以来、ずっとこの別荘で暮らしていた。
ジャスティーンにとって行くところはここしかないのだ。恋人の家を飛び出してきたものの、他に行くところがない。しかし「ちょっと手を加えたら、この家は悪くないと思うわ」と言うジャスティーンに、「あたしはきらいだな。ものすごく寒いし、近くに住んでいる人もいないし」と長女のメラニーは不満顔だ。さらに、しばらくすると自分勝手な母親まで押しかけてくる。
そういう波乱含みの新生活が続く一方で、64年前のルーシーの日記が挿入されていく。それは3人姉妹の日々だ。長女リリス、次女ルーシー、三女エミリー。ジャスティーンは、その長女リリスの孫娘である。表面は
牧歌的だが、なんだかルーシーの周囲には微妙な雰囲気がある。現在と過去、2つの物語が交互に語られ、おお、ネタばらしになりかねないのでこれ以上は書けない。ヒントは、ジャスティーンの長女メラニーと、過去編のルーシーがともに11歳であることだ。
真実は物語の底にずっと隠されているが、それが爆発するラストが素晴らしい。秀逸な人物造形、見事な構成、鮮やかな描写力。圧巻のラストまで一気読みの傑作だ。
(早川書房 2100円+税)