英雄たちが好んだ料理に舌鼓

公開日: 更新日:

「英雄たちの食卓」遠藤雅司著

 歴史にその名を残す英雄たちは、日々、何を食べていたのか。その豪快なエピソードの数々から、さぞや贅を尽くした、酒池肉林の日々を過ごしていたのではないかと想像されるが、実際はどうだったのか。

 そんな食いしん坊な好奇心に応えてくれるのが本書だ。古代エジプトのファラオ・ラムセス2世から、フランスの王妃マリー・アントワネットまで、歴史上の人物たちの愛した料理を、各人のエピソードとともに紹介する歴史ビジュアルブック。

 古代エジプト、プトレマイオス朝最後のファラオ・クレオパトラ7世。絶世の美女として知られる彼女が、王朝再建のため、ローマの三頭政治の一角・カエサルを接待した宴席に登場したのは「モロヘイヤスープ」。かつて、どんなクスリも効かないほどの重病を患ったエジプト王がこのスープを飲んで病気が治ったという言い伝えからモロヘイヤは、「王様の野菜」と呼ばれていたそうだ。

 カエサルの死後、クレオパトラは、ローマの新たな実力者・アントニウスに接近。彼女がアントニウスに手土産として持たせた「チョウザメの塩漬け 黒海風」も登場。

 その他、アレクサンドロス3世が遠征中に催した結婚式で招待客にふるまった「マケドニア風エンドウ豆の卵とじ」や、モンゴルの皇帝で元朝を起こしたクビライ(フビライ・ハン)が、登用したマルコ・ポーロとともに食べた「馬乞」(モンゴル式手打ち麺)、肉好きだったスペインのフェリペ2世が愛した「マンハル・ブランコ」(16世紀スペイン風鶏肉ピンク煮込み)など。16人が愛した30皿が並ぶ。

 各料理のレシピも添えられているので、英雄たちに思いを馳せながら、同じメニューに舌鼓を打つこともでき、読み物としても面白いお薦め本。(宝島社 1700円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…