「罪人のカルマ」カリン・スローター著 田辺千幸訳
ジョージア州捜査局特別捜査官ウィル・トレントを主人公とするシリーズの第6作だが、このシリーズはどこから読んでも大丈夫なので、これまでの作品を未読の方でも安心して手に取られたい。これが面白ければ遡ればいい。
今回は、現在の女子大生誘拐事件と、40年前の娼婦失踪事件が、並行して描かれていく。当然、この2つが最後には絡み合ってくることになるが、どう絡み合うかはネタばらしになるので、ここに紹介できない。驚くべき真相が背景にあると書くにとどめておく。
現在編では、なぜかウィルが捜査から外されることと、ウィルの父親が刑務所から仮釈放で出所してくることがポイントで、これも見過ごせないが、2人の女性捜査官が大活躍する過去編こそが本書の白眉。1人はウィルの上司となっているアマンダ、もう1人はウィルの同僚フェイスの母親イヴリン。この2人の若いヒロインが、犯人を追う一方で、女性差別が色濃く残る時代の警察で、男どもの横暴や無理解といかに闘ってきたか、その日々が克明に描かれていくのだ。
強くたくましくタフなヒロインたちが犯人を追いつめ、壮絶なアクションを繰りひろげるラストまで、一気読みの迫力である。本書が面白かったら、ぜひとも前作「血のペナルティ」を続けて読むことをおすすめしたい。60代半ばのアマンダとイヴリンが銃を片手に頑張る姿に、おそらく感動するだろう。
(ハーパーコリンズ・ジャパン 1185円+税)