「仕事は2番」こざわたまこ著
「お仕事小説」とは、特定の仕事を通して何事かを発見していくドラマを描くもので、その仕事ならではの特殊性があればあるほど、望ましい。普通の小説と一線を画することができるからだ。
そういう観点に立つと、「お仕事小説」の衣装はつけていても、本書は少し異なっている。OA機器を販売する吉丸事務機株式会社に勤務するさまざまな人を、それぞれの視点から描く連作小説だが、OA機器は物語にあまり関係がないし、それぞれの部署の特殊性もほとんど関係ない。だから本書はひとつの会社で働く人々を描く「会社小説」として読みたい。その文脈で読むと、本書はたっぷりと堪能できる。
たとえば、総務課長の内野は、部下のOLから「ウッチー、滑舌悪すぎじゃない?」と言われているが、外から見るとそのようにウザイ課長も、彼が視点人物になる短編を読むと、若いときには夢があり、恋があったことを私たちは知るのだ。それがいま、妻にも娘にも邪険にされて、それで会社でOLたちに揶揄されているのでは応援したくなる。
印象に残るのは最後の一編だ。吉丸事務機株式会社が入っているビルの清掃会社で働く老人を描くものだが、彼の孤独と、やる気のない若者との現在の仕事を、きりりと描いて強い印象を残している。目新しさはないものの、その丁寧な筆致は一票を入れておきたい。今後に注目だ。(双葉社 1400円+税)