「サイレント(上・下)」カリン・スローター著、田辺千幸訳
警察小説である。アメリカの田舎町で湖から若い女性の死体が発見されるのが冒頭。容疑者として若い男が逮捕されるが、男は留置場で自殺。壁には無実を訴えるメッセージが血で書かれていた。地元警察の失態だとして、ジョージア州捜査局の特別捜査官ウィルが現地に赴くことになるが、地元警察はよそ者を歓迎せず、積極的な協力もしないからウィルは孤軍奮闘。そういう話だが、相変わらず一気読みの面白さで、読み始めたらやめられなくなる。
相変わらず、というのは、これが特別捜査官ウィルを主人公とするシリーズだからである。もっとも続いているわけではないので、本書で初めてカリン・スローターを読む人でも大丈夫。たとえば、本書で異彩を放つのはサラ・リントンで、夫ジェフリーの死は地元警察のレナに原因があるといまでも彼女は考えていて、ずっとレナを敵視。 今回の容疑者の死もレナの失態だとサラは考えている。この女を警察から追放しなければ今後も問題が生じるだろうと言うサラの濃い感情が、本書を異色の警察小説にしている点は見逃せない。ところが、サラの夫ジェフリーがどのように亡くなったのか、その巻は未訳なので私たちは知らないのだ。それでもこれだけ読ませるのである。だから大丈夫。
これを読んで面白ければ、とりあえず前作の「ハンティング」を読まれたい。こちらも面白いぞ。
(ハーパーコリンズ・ジャパン各861円+税)