「フーガはユーガ」伊坂幸太郎著
主人公は、常盤優我と風我という双子の兄弟。2人には他人にはなかなか理解してもらえない重大な秘密があった。それは誕生日の決まった時間になると、なぜか2人が入れ替わってしまうこと。小学生のときに異変に気づき、当日はなるべく同じ服を着る、その時刻にはトイレの個室など人目につきにくい場所にいるなどの約束をしていたのだが、ある盗撮映像に入れ替わりの瞬間が撮影されてしまい、不審に思ったテレビ番組のディレクター・高杉が優我に連絡をとってきた。事情を聴かせてほしいという高杉に対して、優我はファミリーレストランの中で今までのいきさつを話し始めるのだが……。
「オーデュボンの祈り」で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビューして以来、「ゴールデンスランバー」「AX アックス」などのヒット作を連発してきた著者の最新作。暴力的な父親と頼りない母親の下に生まれながらも、お互い支え合いながらサバイバルしてきた双子の兄弟が、入れ替わりを武器に理不尽な事件に立ち向かう。
読み進めるうちに、伏線が随所に用意されていたことに驚かされること必至。
(実業之日本社 1400円+税)