「酔象の流儀」赤神諒著
天正元年、朝倉との戦いに勝った信長の前に、山崎吉家の首が差し出された。吉家は朝倉将棋で最強の駒、「酔象」に例えられ、朝倉の忠臣としても知られていた武将だ。100年にわたって栄えた越前の名将、朝倉宗滴は、享禄4年、加賀の本願寺との戦いで敗北した。そのとき、本陣を守って踏みとどまった別動隊が地獄の戦場から戻ったと聞いて、宗滴は驚愕した。しかも隊将を討たれた隊を指揮したのは、わずか14歳の山崎吉家だという。
吉家は慕っていた従兄が討たれ、首を取られたのを必死で奪い返したが、心神喪失状態だった。宗滴が従兄の生首を抱きしめると、吉家の目から涙が滂沱とあふれ出た。
朝倉家の名将に仕えた武士を描く、心が熱くなる時代小説。
(講談社 1600円+税)