「刀と算盤」谷津矢車著
「馬律流」と看板を掲げた道場に、「唯力舎」の唯力を訪ねて米屋の信介がやって来た。数日前、両国橋で釣りをしていたときに声をかけられ、「商家の経営のお手伝いをしているので、お店のやりくりにお困りでしたら私のところまできてください」と言われたのだ。
米屋の客は30軒くらいで、両国橋で釣ったコイを売っても赤字は埋まらない。唯力は米だけでなく、海苔の佃煮も店先に並べることを勧めた。すると、米を買いに来た客がみな佃煮を買うようになり、客足が増えた。ところが、米と一緒に味噌を売っている米屋があるのに気づいて焦った信介は……。
経営コンサルタントを生業とする侍を描くユーモラスな時代小説。 (光文社 1500円+税)