「のび太の月面探査記」辻村深月著
月面探査機「ナヨタケ」のカメラに、竜巻のようになった渦状の柱が何本も写り込んだところから物語は始まる。その正体を巡って、小学校のクラス内でも諸説が飛び交うなか、のび太は「それは月にいるウサギだ」と主張したことでみんなの笑いものになってしまった。悔しさでいっぱいになったのび太は、ドラえもんの道具を使って月の裏側にウサギ王国をつくり始める。
そんなある日、クラスに謎の多い転校生・ルカがやってきた。のび太は、いつもの遊び仲間のジャイアン、スネ夫、しずかちゃんに加えてルカも誘って、ウサギ王国に向かうのだが……。
本書は、直木賞作家である著者が脚本を手掛けて話題を呼んだ「映画ドラえもん のび太の月面探査記」を、改めて自ら書き下ろしたもの。子どもの頃から大のドラえもんファンだったということもあり、ドラえもんのポケットから繰り出される秘密道具「異説クラブメンバーズバッジ」や「わすれろ草」など、漫画を読んだことのある人なら懐かしくなる道具も登場。
国民的に知られているキャラクターが、小説の中で冒険を遂げる姿が、なんとも新鮮で面白い。
(小学館 1800円+税)