「上方らくごの舞台裏」小佐田定雄著
落語作家の著者が、上方落語の演題を紹介しながら、落語家たちの思い出をつづる演芸エッセー。
大阪の天王寺公園で開業する伝説の理容師と客のやりとりを描いた「青空散髪」は、3代目林家染語楼師匠がつくった昭和の新作落語。3代目はほかにも市役所の徴税係が長屋に集金に来てひどい目にあう「市民税」など多くの作品を残し、1975年に56歳の若さで亡くなった。青空散髪は、創作の才こそなかったが、芸の面では3代目をしのいでいたという4代目からほかの一門にも伝えられている。
その他、初代・2代・3代の桂春団治師匠が十八番にしていた「いかけや」、それを3人に教えたことを生涯の自慢にしていた4代目桂文団治師匠など、38の演題と共に師匠たちの魅力や素顔を紹介する。
(筑摩書房 940円+税)