EVシフト時代
「EVと自動運転」鶴原吉郎著
「100年に一度の大変化」とトヨタの社長が危機感をあらわにするEV(電気自動車)への一大シフト時代がやってきた。
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「電気自動車」でなく、わざわざEVと呼ぶのはなぜか。実はEが「電気」と「電子」2つの意味だから。つまり動力が電気(電池車)というだけでなく、電子制御された運転まで可能にするからだ。これまでも電子機器が多用されてきたが、いまは電子的なAI(人工知能)の力で自動運転まで実現しつつあるのだ。本書はこの状況をつたえる技術ジャーナリストの最新リポート。
キーワードは「電動化」「自動化」「コネクテッド化」の3つ。著者によれば「電動化」は2015年に欧州で起こった「ディーゼルゲート」の影響。独フォルクスワーゲンがディーゼル車の燃費を不正に操作していたことが発覚し、それまで「EVよりディーゼル」一辺倒だった欧州が16年のパリ・モーターショーで一気に電動化に動いたという。
「自動化」は最近事故の話題なども相次ぐ自動運転化。もとは軍用車両の無人化研究から始まったが、GPSなどの発達によって一気に流れが決まった。「コネクテッド化」は車が電子通信機器とリンクする「スマホ化」だ。今や、車のAIスピーカーを使ってピザの出前を取るなど当たり前。それどころか従来は完成車を売る「メーカー」だった自動車会社が、今はライドシェアやロボットタクシーなどを手がける「サービス産業」化しつつある。まさに世紀の一大シフトが進行中だ。
(岩波書店 780円+税)
「自動車世界戦争」泉谷渉著
「失われた20年」が過ぎてもパッとしないニッポン。世界では大して売れないHEV(ハイブリッド車)がなぜか日本でだけ売れるなど「ガラパゴス市場」の弊害も再々指摘される。
しかし、27年前に半導体業界紙を創刊し、「日本最古参の半導体記者」である著者は「日本勢は圧勝する!」と意気盛んだ。
たとえば、EV用の車載向けリチウムイオン電池の世界シェアでトップを誇るパナソニック。自動運転レベル4で需要増のC―MOSイメージセンサーもソニーの独壇場である。
また、トヨタやホンダも次世代自動車用半導体を自前で開発中。どっこい日本企業は元気モリモリと豪語している。
(東洋経済新報社 1500円+税)
「EVウォーズ」永井隆著
オランダは2025年、インドとスウェーデンは30年、英仏独では40年までにガソリン車の新車販売を禁止する方針。もはやEV化の流れは固まった。本書は日本発のEVとして先陣を切った日産リーフの開発ストーリーを軸に、そこにからんだNECのマンガン酸リチウムイオン電池の開発者の奮闘と挫折などを物語っていく。一種の企業・技術ドキュメントとして、分野や業界は違っても共感できる読者は多いだろう。
著者は本紙で人気コラム「グラスの中の経済学」を連載中。
(日本経済新聞出版社 1600円+税)